2021.02.22【論文紹介】超高速構造ダイナミクスによるカーボンナノチューブ糸/シートのCNT間界面でのフォノン輸送
背景
現代の情報化社会は,集積回路の微細化によって成り立っているが,ナノスケールサイズの集積回路ではリーク電流による発熱が大きな課題となっている.そこで熱・電気伝導特性に優れている,カーボンナノチューブ(CNT)が注目されている.一方で,熱輸送特性に関係するフォノンとキャリア輸送のダイナミクスは未解明である.
目的・手法
CNT糸/シート中のCNT間におけるフォノン・キャリア輸送ダイナミクスを解明するために,超高速時間分解電子回折と超高速光学分光法を用いた.また,CNT糸/シートを通電加熱処理した場合としない場合で比較した.
結果
通電加熱処理を行うことで,CNT糸/シートが電気伝導率を維持したまま,熱伝導率が向上することが明らかになった.これは,CNT間界面でのアモルファスカーボンのグラフェンへの構造変化に起因していると考えられる.この結果は,超高速時間分解電子回折・超高速光学分光法から得られたフォノンの時間的振る舞いと一致する.これは,ナノスケールデバイスでの新たな熱的・電気的特性制御の可能性を示唆している.
論文情報
タイトル: Phonon transport probed at carbon nanotube yarn/sheet boundaries by ultrafast structural dynamics
ジャーナル:Carbon , 170, 165-173 (2020).
DOI:10.1016/j.carbon.2020.08.026
著者:
氏名 | Name | 所属 |
羽田真毅 | Masaki Hada | 筑波大学 |
牧野孝太郎 | Kotaro Makino | AIST |
井上寛隆 | Hirotaka Inoue | 岡山大学 |
長谷川太祐 | Taisuke Hasegawa | NIMS |
増田秀樹 | Hideki Masuda | 筑波大学 |
鈴木弘朗 | Hiroo Suzuki | 岡山大学 |
白須圭一 | Keiichi Shirasu | 東北大学 |
中川智広 | Tomohiro Nakagawa | 岡山大学 |
瀬木利夫 | Toshio Seki | 京都大学 |
松尾二郎 | Jiro Matsuo | 京都大学 |
西川亘 | Takeshi Nishikawa | 岡山大学 |
山下義文 | Yoshifumi Yamashita | 岡山大学 |
腰原伸也 | Shin-ya Koshihara | 東京工業大学 |
Vlad Stolojan | Vlad Stolojan | University of Surrey |
S. Ravi P. Silva | S. Ravi P. Silva | University of Surrey |
藤田淳一 | Jun-ichi Fujita | 筑波大学 |
林靖彦 | Yasuhiko Hayashi | 岡山大学 |
前田理 | Satoshi Maeda | NIMS |
長谷宗明 | Muneaki Hase | 筑波大学 |