2020.02.18【イベント】学部3年生向けの研究室見学を実施します!

以下の日程で研究室見学を実施しますので,学部3年生の人は是非林研究室にお越しください!  実験室見学 日時:2月19日(水)14:00~17:00 場所:工学部3号館 3階 E310 研究室所属学生が実験室を案内しながら研究室に関する説明や質問への回答を行ないます. 研究室紹介  日時:① 2月20日(木)13:00~14:00    ② 2月21日(金)15:00~16:00    ③ 2月27日(木)11:00~12:00 場所:工学部3号館 3階 E304 研究室の先生方と学生がスライドを使用して研究室の説明や質疑応答を実施します.各実験室も見学してもらう予定です. また上記日程以外でも,学生居室E310の学生に声をかけてもらえれば随時研究室紹介を行ないますのでお気軽にお越しいただければと思います. 研究室見学,初日,満員御礼.17時までやっています.見るだけは,見とこうか,かな?以下の日時も見学できますよ! 研究室紹介 日時:① 2月20日(木)13:00~14:00    ② 2月21日(金)15:00~16:00    ③ 2月27日(木)11:00~12:00 場所:工学部3号館 3階 E304 — ナノデバイス・材料物性学研究室(林靖彦研究室)@岡山大学 (@NanoLab_Okayama) February 19, 2020  

2020.02.12【論文紹介】カーボンナノチューブ紡績糸を用いたフレキシブル熱電発電素子を計算・実験の融合により高効率化

背景 ~界面制御によるフレキシブル熱電変換素子の高効率化~ 温度差によって電気を生み出す熱電発電素子は,火力発電などで利用しにくい100℃以下の温度からでも発電することができるため,身の回りにある様々な廃熱(自動車,工場,体温等)を有効に利用することができます.カーボンナノチューブ紡績糸(Carbon nanotube yarn, CNT yarn)はもともとp型半導体の性質を示し,化学ドーピングにより線材の一部をn型に変えることでn-pペアが形成され,線状の熱電発電素子となります.CNT紡績糸の熱電発電素子は,従来のビスマステルルのような無機材料を利用したものと比較し,軽量・フレキシブルでシンプルな構造であるため,これまでに素子を適用できなかった曲面や可動部にも貼り付けることができ,より応用の幅を広げることが可能となります.CNT紡績糸は無数のCNTによって形成されており,CNTやドープ剤,不純物であるアモルファスカーボン間の界面を制御することが熱電発電効率向上の鍵となります. 目的・手法 本研究では,まず反応経路自動探索法(GRRM)を用いた計算手法によってCNT紡績糸中の物質変化を予測しました.下図は,CNT間に挟まれたアモルファスカーボンが加熱処理によってどのような構造変化をするかを表しており,黒点線は加熱前のsp2カーボン量を示しています.CNTに挟まれていない場合(下図(b))では2500 K以下でほとんど構造変化が起きていませんが,CNTに挟まれた場合(下図(a))には,0.1秒以下でsp2カーボン量が増加(グラフェン化)していることがわかります.この計算による予測をもとに,CNT紡績糸を2000 Kで通電加熱処理を施した後にポリエチレンイミン(PEI)でn型ドーピングを行ない,加熱前後の熱電特性を評価しました. 結果 通電加熱処理前後の熱電特性(ゼーベック係数,導電率,パワーファクター)を下図に示します.通電加熱処理によりp型のゼーベック係数が向上(100 μV/K)し,PEIによるドーピング後にはn型のゼーベック係数も大幅に向上(-100 μV/K)していました.このゼーベック係数の値は,p型,n型ともにフレキシブル熱電発電素子の中でもトップレベルの数値となっています.熱電発電特性の変化は,ラマン測定により計測されるsp2カーボン由来のGバンドとsp3カーボン由来のDバンドとの強度比(G/D比)と相関があることがわかります((d)~(f)).半導体のゼーベック係数はフェルミエネルギー近傍の状態密度の微分に比例することが知られており,グラフェンフレークの増加に伴ってCNT紡績糸のゼーベック係数が増加するものだと考えられます.本成果は,計算によって予測した効果的なsp2カーボンの増加条件がデバイス特性に繋がった結果となっており,計算による予測と実験による検証が融合したからこそ得られた知見です.界面制御分野,デバイス開発分野のみでなく,近年注目されているマテリアルインフォマティクス分野においても重要な成果となります. 論文情報 タイトル:One-Minute Joule Annealing Enhances the Thermoelectric Properties of Carbon Nanotube Yarns via the Formation of Graphene at the Interface ジャーナル:ACS Applied Energy Materials 2 (10), 7700-7708 (2019). DOI: 10.1021/acsaem.9b01736 著者: 氏名 Name 所属 羽田 真毅 Masaki Hada 筑波大学 長谷川 太祐 […]

2020.02.05【論文紹介】高分子線材とカーボンナノチューブ紡績糸を組み合わせたマルチフィラメント型ソフトアクチュエータを開発

背景 ~コイル状高分子ソフトアクチュエータへの効率的な熱エネルギー投入~ ナイロンなどの安価な高分子線材を捻ってコイル形状にした線材は,加熱で収縮,冷却で伸長するという動作を示し,さらに軽量でエネルギー効率が高く繰り返し動作にも優れていることから,介護や重量物運搬作業を補助するパワードスーツなどへの応用展開が期待されています.高分子線材ソフトアクチュエータのエネルギー源となる”熱”を与える方法として温風や金属のヒータ線等を利用するといった方法が考えられますが,装置が大掛かりになり,系全体としてコイル状高分子線材が本来持っている軽量性,柔軟性,高伸縮性といった特性が損なわれてしまうという問題がありました. Video from the University of Texas at Dallas 目的・手法 本研究では, コイル状高分子線材ソフトアクチュエータの軽量性,柔軟性,高応答性を損なわず,効率的に熱エネルギーを供給する構造を実現させることを目的としました.熱エネルギーを与える手法として,軽量・柔軟で繰り返し曲げ動作に強いカーボンナノチューブ紡績糸(Carbon nanotube yarn, CNT yarn)をヒータ線として利用することを提案します.CNT紡績糸は,低電圧(~20 V)で十分な熱(~200 ℃)を発生させるための適度な導電性を持ち,また高熱伝導性を有することから伸長時の急速な放熱も期待できます.Φ20μmの高分子繊維(ポリエチレンテレフタレート: PET)と,同径のカーボンナノチューブ紡績糸を複数本ずつ束ねることによって,マルチフィラメント型の線状ソフトアクチュエータを作製しました.またこの際,PET線材とCNT紡績糸の組み合わせ方を変えた3種類の構造を作製し,構造の違いによるアクチュエータ特性について比較しました. 結果 電力変化させた際の発生力の変化を左図に示します.200 mW≒100℃までは,アクチュエータ発生力がほぼリニアに上昇しており,これは実用する際に電力によって発生力・伸縮量を容易に制御できることを示しています.右図は3種類の構造それぞれの発生力試験結果です.ここで,エラーバーは100回の繰り返し動作の際のバラツキを示しています.ヒータ線であるCNT紡績糸が線材断面に均一に配置しているマルチフィラメント構造を持った「Multi-A」と「Multi-B」は,「Mono」より1.5倍程度高い発生力が得られ,また応答性も向上していることを確認しました.本構造の熱拡散シミュレーションを実施した結果,均一に熱源を組み込むことで加熱時及び冷却時に,線材全体に渡って均一で急速な熱拡散が起こり,これが高発生力・高応答性に繋がることを示しました.今後は,応答性や動作効率の核となる高分子材料自体の種類や構造の検討を進め,実用に耐えうる線状ソフトアクチュエータの開発を進めていく予定です. 論文情報 タイトル:High-performance structure of a coil-shaped soft-actuator consisting of polymer threads and carbon nanotube yarns ジャーナル:AIP Advances (IF=1.653) 8, 075316 (2018). DOI:10.1063/1.5033487 著者: 氏名 Name 所属 井上 寛隆 Hirotaka Inoue 岡山大学 吉山 […]

2020.02.04【論文紹介】紡績可能なカーボンナノチューブアレイの構造を特定

背景 ~乾式紡績性カーボンナノチューブの構造特定および高物性化~ 乾式紡績法により作製されるカーボンナノチューブ紡績糸(Carbon nanotube yarn, CNT yarn)は,細くて長い,つまりアスペクト比の高いCNTで構成するほど強度や導電性といった物性が向上します.しかし,アスペクト比の高いCNTほど紡績性を発現させることが難しいことが分かっており,その原理解明及び紡績性を改善し得る合成パラメータの特定が求められていました. 目的・手法 本研究では, CNTアレイ構造と紡績性との関係を明らかにすることを目指しました.従来,紡績可、不可の2値で議論されてきたCNTアレイの紡績性について,アレイからCNTを紡績する際の引出幅変化を,紡績性の評価パラメータとして新規に定義することによって,定量的な評価・比較を実施しました. 結果 CNTアレイの高さと嵩密度に対する紡績性をカラースケールで示したグラフが以下の図になります.本グラフより,紡績性を発現させるためには,長尺で高密度なCNTアレイが重要であることが明確になりました.これはCNTバンドル間の絡み合いが,高さ・嵩密度によって大きく影響されることが原因だと考えられます.また触媒粒子形成プロセスにおける各種合成パラメータを調整することで,高さ・嵩密度を向上させつつ細径のCNTを成長させられることを示しました.本成果は,将来の紡績性CNTアレイの大量生産や,選択的な構造制御をする際に重要な知見になると考えられます. フロントカバー 本研究成果をモチーフにしたイラストが,Carbon 158巻のフロントカバーイラストに選ばれました. 論文情報 タイトル:The critical role of the forest morphology for dry drawability of few-walled carbon nanotubes ジャーナル:Carbon (IF=7.466), 158, 662-671 (2020). DOI:10.1016/j.carbon.2019.11.038 著者: 氏名 Name 所属 井上 寛隆 Hirotaka Inoue 岡山大学 羽田 真毅 Masaki Hada 筑波大学 中川 智広 Tomohiro Nakagawa 岡山大学 […]