2020.02.04【論文紹介】紡績可能なカーボンナノチューブアレイの構造を特定

背景 ~乾式紡績性カーボンナノチューブの構造特定および高物性化~

乾式紡績法により作製されるカーボンナノチューブ紡績糸(Carbon nanotube yarn, CNT yarn)は,細くて長い,つまりアスペクト比の高いCNTで構成するほど強度や導電性といった物性が向上します.しかし,アスペクト比の高いCNTほど紡績性を発現させることが難しいことが分かっており,その原理解明及び紡績性を改善し得る合成パラメータの特定が求められていました.

目的・手法

本研究では, CNTアレイ構造と紡績性との関係を明らかにすることを目指しました.従来,紡績可、不可の2値で議論されてきたCNTアレイの紡績性について,アレイからCNTを紡績する際の引出幅変化を,紡績性の評価パラメータとして新規に定義することによって,定量的な評価・比較を実施しました.

結果

CNTアレイの高さと嵩密度に対する紡績性をカラースケールで示したグラフが以下の図になります.本グラフより,紡績性を発現させるためには,長尺で高密度なCNTアレイが重要であることが明確になりました.これはCNTバンドル間の絡み合いが,高さ・嵩密度によって大きく影響されることが原因だと考えられます.また触媒粒子形成プロセスにおける各種合成パラメータを調整することで,高さ・嵩密度を向上させつつ細径のCNTを成長させられることを示しました.本成果は,将来の紡績性CNTアレイの大量生産や,選択的な構造制御をする際に重要な知見になると考えられます.

フロントカバー

本研究成果をモチーフにしたイラストが,Carbon 158巻のフロントカバーイラストに選ばれました.

二層カーボンナノチューブ紡績

論文情報

タイトル:The critical role of the forest morphology for dry drawability of few-walled carbon nanotubes
ジャーナル:Carbon (IF=7.466), 158, 662-671 (2020).
DOI:10.1016/j.carbon.2019.11.038

著者:

氏名Name所属
井上 寛隆Hirotaka Inoue岡山大学
羽田 真毅Masaki Hada筑波大学
中川 智広Tomohiro Nakagawa岡山大学
丸井 竜輝Tatsuki Marui岡山大学
西川 亘Takeshi Nishikawa岡山大学
山下 善文Yoshifumi Yamashita岡山大学
井上 翼Yoku Inoue静岡大学
高橋 和彦Kazuhiko Takahashiトヨタ自動車
林 靖彦Yasuhiko Hayashi岡山大学

 

 

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