2020.02.12【論文紹介】カーボンナノチューブ紡績糸を用いたフレキシブル熱電発電素子を計算・実験の融合により高効率化
背景 ~界面制御によるフレキシブル熱電変換素子の高効率化~ 温度差によって電気を生み出す熱電発電素子は,火力発電などで利用しにくい100℃以下の温度からでも発電することができるため,身の回りにある様々な廃熱(自動車,工場,体温等)を有効に利用することができます.カーボンナノチューブ紡績糸(Carbon nanotube yarn, CNT yarn)はもともとp型半導体の性質を示し,化学ドーピングにより線材の一部をn型に変えることでn-pペアが形成され,線状の熱電発電素子となります.CNT紡績糸の熱電発電素子は,従来のビスマステルルのような無機材料を利用したものと比較し,軽量・フレキシブルでシンプルな構造であるため,これまでに素子を適用できなかった曲面や可動部にも貼り付けることができ,より応用の幅を広げることが可能となります.CNT紡績糸は無数のCNTによって形成されており,CNTやドープ剤,不純物であるアモルファスカーボン間の界面を制御することが熱電発電効率向上の鍵となります. 目的・手法 本研究では,まず反応経路自動探索法(GRRM)を用いた計算手法によってCNT紡績糸中の物質変化を予測しました.下図は,CNT間に挟まれたアモルファスカーボンが加熱処理によってどのような構造変化をするかを表しており,黒点線は加熱前のsp2カーボン量を示しています.CNTに挟まれていない場合(下図(b))では2500 K以下でほとんど構造変化が起きていませんが,CNTに挟まれた場合(下図(a))には,0.1秒以下でsp2カーボン量が増加(グラフェン化)していることがわかります.この計算による予測をもとに,CNT紡績糸を2000 Kで通電加熱処理を施した後にポリエチレンイミン(PEI)でn型ドーピングを行ない,加熱前後の熱電特性を評価しました. 結果 通電加熱処理前後の熱電特性(ゼーベック係数,導電率,パワーファクター)を下図に示します.通電加熱処理によりp型のゼーベック係数が向上(100 μV/K)し,PEIによるドーピング後にはn型のゼーベック係数も大幅に向上(-100 μV/K)していました.このゼーベック係数の値は,p型,n型ともにフレキシブル熱電発電素子の中でもトップレベルの数値となっています.熱電発電特性の変化は,ラマン測定により計測されるsp2カーボン由来のGバンドとsp3カーボン由来のDバンドとの強度比(G/D比)と相関があることがわかります((d)~(f)).半導体のゼーベック係数はフェルミエネルギー近傍の状態密度の微分に比例することが知られており,グラフェンフレークの増加に伴ってCNT紡績糸のゼーベック係数が増加するものだと考えられます.本成果は,計算によって予測した効果的なsp2カーボンの増加条件がデバイス特性に繋がった結果となっており,計算による予測と実験による検証が融合したからこそ得られた知見です.界面制御分野,デバイス開発分野のみでなく,近年注目されているマテリアルインフォマティクス分野においても重要な成果となります. 論文情報 タイトル:One-Minute Joule Annealing Enhances the Thermoelectric Properties of Carbon Nanotube Yarns via the Formation of Graphene at the Interface ジャーナル:ACS Applied Energy Materials 2 (10), 7700-7708 (2019). DOI: 10.1021/acsaem.9b01736 著者: 氏名 Name 所属 羽田 真毅 Masaki Hada 筑波大学 長谷川 太祐 … Continue reading 2020.02.12【論文紹介】カーボンナノチューブ紡績糸を用いたフレキシブル熱電発電素子を計算・実験の融合により高効率化
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